極上のサスペンス映画・ドラマのおすすめ11選~麻薬カルテル編

映画、ドラマ

最近、麻薬カルテル(麻薬の製造、売買を行うマフィア組織のこと)を扱った映画やドラマに、極上のサスペンス作品が多いのをご存じでしょうか?

本記事では、なぜ麻薬カルテルものに上質のサスペンス作品が多いのかを解説し、アマゾン・プライムやネットフリックスで見ることができるオススメ作品を紹介します。

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麻薬カルテル作品に優れたサスペンスが多い理由

最近のハリウッド映像作品に、麻薬カルテルを題材にしたサスペンス作品の秀作が多いのは、麻薬カルテルの数々の残忍な所業が、映画製作者たちの想像力を掻き立てるからだと思います。

1970~1990年代にコロンビアだったカルテルの拠点は、2000年代にメキシコに移りました。
米国の麻薬汚染が拡大すると同時に、米国にとっての隣国メキシコの治安が麻薬戦争で著しく悪化したのも、アメリカ人にとってはより身近な情勢の変化だったのでしょう。

映画・ドラマを紹介する前に、少しだけ、麻薬カルテルの歴史をまとめてみます。予備知識があれば、映画も倍楽しめること間違いありません。
映画の紹介だけ読みたい方は、次節へ飛んでいただければと思います。

コロンビアの内戦と麻薬カルテル

コロンビアという国名を聞いて、何を思い浮かべますか?

私は、赤道直下の南米の国であり、コーヒーの名産地であるという以外には、麻薬カルテルと政府軍の間で内紛状態に陥っていたため治安が悪い国という印象が強いです。
麻薬カルテルが、国家の存立に大きく影響を与えてしまっていたというわけです。

コロンビアはもともと政情が不安定で反政府組織がゲリラ活動を行うなかに、反目しあう2つのドラッグ・カルテルが複雑に絡み合い、1980年代には最悪の内紛状態になっていたということです。

麻薬王パブロ・エスコバルと米国の麻薬汚染

コロンビアの麻薬王で有名なのが、パブロ・エスコバルです。
1970年代にコロンビア第2の都市メデジンを拠点にメデジン・カルテルを結成し、米国へのコカイン密輸ルートを開拓して、麻薬王にのし上がった人物です。
これを機に、米国の麻薬汚染は急速に拡大しました。米国が麻薬取締局(DEA, Drug Enforcement Administration)を設立したのも、1973年のことです。

エスコバルは貧困層への慈善事業でメデジン住民の絶大な支持を得、国会議員になったこともある一方で、メデジン・カルテルは敵対者に非常に残忍なことで有名です。
政治家の暗殺も多く実行し、1980年代後半には民間人を巻き込む爆破テロも多く起こしました。麻薬撲滅を掲げる大統領候補の暗殺のために、メデジン・カルテルが民間人を多く巻き込む民間機の爆破テロを実行したのは、衝撃的な出来事でした。
競合組織であるカリ・カルテルとの抗争も複雑に絡み合い、コロンビアが内紛状態に陥っていたといわれるのはこのころのことです。

エスコバルは、政府に自分専用の刑務所を建設させ、豪奢な収監生活を過ごしたことでも有名です。それだけ権力者たちからも恐れられていたのです。刑務所内での殺人事件が発覚すると、刑務官の目の前を堂々と歩いて脱獄したとも言われています。

最後は、1993年に潜伏中だったメデジンの隠れ家を突き止められ、警官隊に射殺されました。

あまりにショッキングなパブロ・エスコバルの一生は、映像作家たちの制作意欲を大いに刺激しており、「エスコバル」をタイトルに冠した映像作品は、昨今とても多く発表され続けています。

麻薬カルテルの残忍さ

パブロ・エスコバルが死亡したのち、ライバルだったカリ・カルテルもDEAにより撲滅されると、麻薬ビジネスの主導権はメキシコのカルテルに移ります。

メキシコの麻薬カルテルも、コロンビアのカルテルの残忍さを引き継ぎました。
カルテル同士の抗争も激しく、一般人を巻き込んだテロや虐殺事件も多数、発生しています。
政府関係者の汚職のほか、政府要人の暗殺事件なども起こっており、軍隊を出動して取り締まっていることもコロンビアと同様です。

2000年に10万人あたり10.86件(国際順位ワースト25位)だったメキシコの殺人発生率は、2018年には29.07件(同12位)に増加しました。麻薬犯罪がらみの殺人が、増加の一途をたどっているということです。

麻薬カルテルの暴力は残虐で、巻き込まれた村が虐殺で壊滅される事件なども起きています。
また、首を切り落とした被害者の遺体を、見せしめのために町角に吊るすなどの光景が、実際に行われているという報道も目にします。

米国ハリウッドの映画作家たちは、すぐ隣の国でこのような暴力と恐怖が起こっているというニュースを、過去40年ほどの間に継続的に見聞きしてきました。
多くの映画人たちが想像力を掻き立てられ、リアリティのある映像作品に作り上げているのは、自然な成り行きでしょう。

ドラッグ・カルテルを扱ったオススメ映画・ドラマ

以下、どれも私はアマゾン・プライムまたはネットフリックスで観た映画です。
どちらのサービスも配信コンテンツを定期的に変更するので、読んでいただいている時点で視聴可能かどうかは分かりません。いま見れなくても、しばらくたったら配信が復活することもあるようです。

全部とは言いませんが、ご紹介するうちの多くの作品は、残酷な映像シーンが含まれます。お子様がいないときに視聴するか、一緒に見る場合は年齢制限レーティングを確認することをおすすめします。

潜入者 (The Infiltrator)  2016年公開映画

あらすじ

メデジン・カルテルの密輸するコカインにより、米国で急速に麻薬汚染が拡大していた1980年代に、カルテルの一網打尽を狙って組織の深くまで潜入していく捜査官を描く極上のサスペンス映画。
実在の潜入捜査官の回顧録が原作。

おすすめポイント

正体を知られたらどんな仕打ちが待っているかわからない不安にさいなまれながら、任務を続ける捜査官に扮するブライアン・クランストンの演技が素晴らしい。ヒリヒリした緊張感に、夢中になって見入ってしまうこと間違いなし

監督 ブラッド・ファーマン
出演 ブライアン・クランストン、ダイアン・クルーガー

ボーダーライン (Sicario)  2015年公開映画

あらすじ

危険な銃撃戦をともなう家宅捜査を何度も潜り抜け、メキシコ国境でのカルテル摘発作戦に抜擢されたFBI捜査官。
彼女が初めて参加した作戦チームの初任務は、汚職がはびこるメキシコ警察の裏切りに警戒しながら、カルテルに逆らった市民たちの死体が高架から吊るされる無法の町をパトロールするオペレーションだった。
主人公が米国内とは次元の違う暴力の凶暴さに度肝を抜かれ、作戦チームの脱法的な捜査手法にも反感を持つ中で、捜査は進展していきます。

おすすめポイント

ひどく残酷なシーンは控えながらも、不穏で気分が悪いほどの緊迫感が、ひしひしと伝わってくる力強い映像です。
FBI捜査官を演じたエミリー・ブラントが、暴力に対する恐怖と嫌悪感をとてもよく演じています。そして、捜査チームに参加しながら所属機関不詳の不気味な男を演じる名優ベニシオ・デル・トロは、いつもの通り重厚で素晴らしい存在感です。

カンヌ映画祭コンペティション部門出品作品。

監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演者 エミリー・ブラント、 ベニシオ ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン

ブレイキング・バッド (Breaking Bad) 2008~2013年放送ドラマ

あらすじ

5シーズン全62話から成るテレビドラマ・シリーズ。

肺ガンを宣告された高校教師が、家族に遺産を残したい一心から、元教え子の麻薬売人とともに覚せい剤の精製に手を染める。
病気のことも、犯罪ビジネスのことも家族に共有できないまま、いままで縁がなかった暴力の世界に引きずり込まれていく孤独な男を演じるブライアン・クランストンの演技が素晴らしい。

オススメポイント

ドラマ界のアカデミー賞ともいわれるエミー賞を数多く受賞したシリーズです。とくに、クランストンは2008、2009、2010、2014年度のエミー賞主演男優賞に輝きました。
ネットフリックスが製作した映画「エル・カミノ:ブレイキング・バッド・ザ・ムービー」は、本ドラマシリーズの後日譚です。同じくスピン・オフでネットフリックスが製作したドラマ「ベター・コール・ソウル」も6シーズンも続く大ヒットを記録しました。「ブレイキング・バッド」の主演2人が抜け、脇役だった俳優たちが主演する「ベター・コール・ソウル」が大ヒットしたことは、「ブレイキング・バッド」が脇役俳優までも層が厚かったことを物語っています。

企画 ヴィンス・ギリガン
出演 ブライアン・クランストン、アーロン・ポール

ナルコス (Narcos) 2016~2018年配信のドラマ

あらすじ

ネットフリックスが製作した3シーズンのドラマ・シリーズ。
アメリカから派遣されたDEA(麻薬捜査局)捜査員たちの、コロンビアのカルテルとの戦いを実話に基づいて描いています。

おすすめポイント

シーズン1~2では麻薬王パブロ・エスコバルとメデジン・カルテルの隆盛と没落の歴史を系列だって見ることができます。エスコバルやメデジン・カルテルの幹部たちに取材した映画に力作は多いですが、このドラマを見ると、それら映画の背景がよくわかります。
捜査官たちの人物描写がリアルで、サスペンスもすばらしく、見ごたえ十二分のドラマです。最悪の麻薬王エスコバルの人物も大変よく創り上げられている一方で、嫌悪感を感じさせる人物に描かれている点も、好感を持ちました。
日本とはかけ離れた南米の風景の美しさが画面に広がるのも、大きな魅力です。

シーズン3はエスコバル死後の話。メデジン・カルテルのライバルだったカリ・カルテルにDEA捜査官が挑みます。1~2シーズンに引き続き、高いテンションで夢中に見るうちに、あっという間に見終わってしまいました。

ネットフリックスでは、続編としてメキシコのカルテルとDEAの戦いを描く「ナルコス メキシコ編」(全3シーズン)を製作しています。

脚本 クリス・ブランカトー
監督 ジョゼ・パジーリャ
出演者 ボイド・ホルブルック、ペドロ・パスカル、ヴァグネル・モウラ

ワイルドランズ (Wildlands)  2017年公開ドキュメンタリー映画

あらすじ

アメリカ人作家が、コロンビアのドラッグ・カルテルに関わった人物たちをインタビューし、それぞれの人生を描き出すドキュメンタリー映画。
インタビューを受けるのは、刑期を終えた密売人や殺し屋、司法取引で自由の身になった資金洗浄人、引退後の麻薬捜査局(DEA)捜査員やジャングルでの麻薬工場撲滅作戦に参加した米兵。さまざまな立場でドラッグ戦争に関わった人生の対比を、非常に興味深く見ることができるドキュメンタリー映画です。

おすすめポイント

映画冒頭では、ボリビアにあるサン・ペドロ刑務所を訪れます。囚人が妻子と共に暮らし、刑の重さでなく資産の多さで待遇が決まるというスラム街のような刑務所の在り方は、私たち日本人にはあまりに衝撃です。
暴力の限りを尽くしコロンビアを恐怖と混乱に陥れたパブロ・エスコバルの部下だった殺し屋。刑期を終えたいま、貧困の町で行く先々で英雄として住民たちから握手を求められ、いまもエスコバルを慕い墓参りを欠かさない元殺し屋の姿は、現在の日本社会とはまったく異なる社会が存在するのだということを思わせます。

成功裏に終わったパブロ・エスコバルのメデジン・カルテルと、それに続くカリ・カルテルの撲滅に携わった捜査員たちのインタビューでは、その後ドラッグ産業の中心がメキシコに移り、ドラッグの流通が加速し暴力がより凶悪化してしまった皮肉な歴史も議論されます。

キックオーバー (Get the Gringo) 2012年公開映画

あらすじ

アメリカ人の逃亡犯はメキシコ警察に逮捕され、刑務所に収監されます。そこは先進国の近代的な刑務所とはかけ離れた場所なのでした。

刑務所内で囚人たちは金銭を払って寝床を契約し、妻子と共に住み、お互いに商売を営んで生活しています。刑務所というより、閉鎖された貧民街という様相です。
最悪の犯罪者が日常的に殺人さえも指示し、ほしいままに支配する刑務所内で、支配者に抑圧された少年と出会い、主人公はこの少年を助けるために立ち上がります。

おすすめポイント

麻薬カルテルを扱った映画ではありませんが、「ワイルドランズ」で見のに似た中南米の異様な刑務所のが舞台としていることが興味深かったので、ここに紹介することにしました。
ストーリーを凝って作り込んだハリウッドらしい娯楽映画で、サスペンスもとてもよいです。

監督 エイドリアン・グランバーグ
出演 メル・ギブソン

バリー・シール/アメリカをはめた男 (American Made) 2017年公開映画

あらすじ

メデジン・カルテルのコカインを米国へ密輸していたパイロット、バリー・シールの生涯を描く犯罪映画。
麻薬王エスコバルに気に入られ組織内で出世していく一方で、DEA(アメリカ麻薬取締局)にマークされ情報提供を拒めないシールが、しだいに心理的に追い込まれていくサスペンス映画。

おすすめポイント

急に狂暴化することがある麻薬王との面会のシーンなど緊迫感があるシーンもありますが、飛行機の飛行シーンとともに主人公の麻薬組織での出世物語がテンポよく進展し、とてもおもしろく見ることができます。
札束の隠し場所に困るほどの収入の多さと、政府機関とカルテルの間で嘘だらけの行動を続ける緊張感のあまりに人格が狂ってしまう主人公は、トム・クルーズの最高のはまり役だと思います。

監督 ダグ・リーマン
出演 トム・クルーズ、マーゴット・ロビー

ケシ畑の小さな秘密  2013年公開映画

コロンビアの麻薬カルテルと政府軍の内紛に巻き込まれた親子の悲劇を描くドラマ。

あらすじ

戦場を逃れ、親類を頼って新しい街にやってきた父子。
父には、家族の生活を破壊した紛争の原因である憎むべき麻薬を育てるケシ畑での労働しか、日々の糧を得る手段が見つかりません。
近所の少女と遊ぶようになった少年は、しばし楽しい日々を過ごすようになりますが、この街にも紛争は近づいていました。

おすすめポイント

素朴で美しい映像のなか、内紛に巻き込まれたコロンビア国民の救いのない状況が、静かに語られる文芸作品です。

監督 フアン・カルロス・メロ・ゲバラ
出演 ルイス・ブルゴス, カルロス・ウアルパ, ルイス・ロサノ

ハード・ラッシュ (Contraband) 2012年公開映画

マーク・ウォールバーグ主演のクライムアクション映画。

あらすじ

すでに引退していた麻薬密売人は、麻薬密売でミスを出し損失を補填するよう脅迫される妻の弟を救うべく、パナマ往復のコンテナ船に乗り込む。
出港までの限られたタイムリミットの間に、カルテルの麻薬王との交渉、密売品の受け取りを済ます必要に迫られる。

おすすめポイント

タイムリミットが限られる中、緊張感あふれるサスペンス・アクション娯楽映画です。

監督 バルタザール・コルマウクル
出演 マーク・ウォールバーグ、ケイト・ベッキンセイル、ベン・フォスター、ジョヴァンニ・リビシ

コロンビアーナ (Columbiana) 2012発表映画

リュック・ベッソン脚本によるクライム・アクション映画。

あらすじ

コロンビアの麻薬カルテルの幹部だった父と母を殺され、一人逃亡した少女は、シカゴの叔父を頼って育てられる。
大人になった彼女は、恋人にすら自分のことを打ち明けない孤独な殺し屋になっていた。
ある事件をきっかけに、彼女の復讐劇の幕が切って落とされる。

おすすめポイント

リュック・ベッソンの初期の名作「ニキータ」を彷彿としながら見れるアクション娯楽作品。スタイリッシュな映像と迫力のアクションが魅力です。

監督 オリヴィエ・メガトン
出演者 ゾーイ・サルダナ

ラストスタンド (The Last Stand) 2013年発表映画

アーノルド・シュワルツェネッガーがカリフォルニア知事の任期を終え、10年ぶりに主演したアクション映画。

あらすじ

脱獄した麻薬王が、大勢の凶悪な手下を引き連れ、メキシコ国境を目指して南下してくる。
国境の町の老保安官(シュワルツェネッガー)は、一味が町を通過するとの知らせを受け、町の4人の住人達の協力のもと、迎え撃つ準備を始める。

おすすめポイント

麻薬王が出て来るだけで、麻薬カルテルものとは言えないかもしれませんが、対決の時が刻々と迫って来る緊張感がよかったのと、シュワルツェネッガーの久しぶりのアクション映画が存分に楽しめたので、ここで紹介します。
現代を舞台に古き良き西部劇が繰り広げられる。清々しい一本です。

監督 キム・ジウン
出演 アーノルド・シュワルツェネッガー、フォレスト・ウィテカー、ピーター・ストーメア

まとめ

昨今のハリウッド作品のなかで、麻薬カルテルを扱った映画・ドラマに優れたサスペンス映画が多いことを、その理由とともに紹介しました。

最近私がアマゾン・プライムやネットフリックスで観たなかで、非常におもしろかった麻薬カルテルものの映画9本とドラマ2シリーズをご紹介しました。

おなじサスペンス映画でも、ホラー・サスペンス作品サメが出て来るホラー映画日常に潜むホラーに関する映画のオススメについては、別記事で紹介しています。ぜひ合わせてお楽しみください!

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