
日本の百名山にも数えられる筑波山は、関東平野随一の名山です。
秋は紅葉、春は新緑と、季節ごとに違った魅力を楽しめる観光名所でもあります。
いくつかの登山道があり、初心者から経験者までハイキングを楽しむことができます。
本記事では、その中でも歩きやすく人気の「おたつ石コース」を、道の様子や風景の写真を交えながら紹介します。
おたつ石コースは、以下の特徴があります。
- 歩きやすく、筑波山の登山道の中で、もっとも難易度が低いとの評判。
- 「白雲橋コース」との合流後は、特徴的な巨岩が多くみられるのが魅力。
筑波山の基礎情報
「おたつ石コース」の登山の様子を紹介する前に、まずは筑波山そのものについて簡単におさらいします。
まずは山の概要、その後に筑波山神社について、最後にアクセス情報の順で紹介します。
関東平野随一の名山、筑波山
筑波山は標高877メートルと決して高い山ではありませんが、広大な関東平野の中ではひときわ存在感を放つ名山です。
山頂からは霞ヶ浦や関東平野を一望でき、天気が良ければ遠く富士山まで見渡せる絶景が広がります。
また、筑波山は二つの頂を持つ独特の山容でも知られています。
女体山(877m)と男体山(871m)が並び立つ姿は「西の富士、東の筑波」と称され、古くから人々に親しまれてきました。

筑波山神社|歴史と信仰、観光の見どころ
筑波山は古くから信仰の山として知られ、万葉集にも多くの歌が詠まれています。
二つの山頂には、それぞれイザナミとイザナギを祀る神社があり、山全体が霊域とされてきました。
中腹には荘厳な拝殿があり、参拝や観光の目的地としても人気です。
登山やハイキングと組み合わせて訪れるのも良いですし、この筑波山神社だけを目的にしても十分に見ごたえがあります。

筑波山おたつ石コースへのアクセス|車・バス・駐車場情報
筑波山の登山・観光は、筑波山神社(ケーブルカーの駅にも近い)または つつじが丘(ロープウェイ)を起点にするのが便利です。
- 自家用車の場合…つくば市街からは約30分、東京からは約1時間半ほどで到着します。筑波山神社入口には市営駐車場が3か所あり、合計で約450台が駐車可能です。参道沿いのホテルでも駐車場を提供しています。 つつじが丘まではさらに10分ほど車で進み、こちらにも約400台収容できる大駐車場があります。駐車料金は2021年時点で1日500円前後です。
- バスの場合…つくばエクスプレス「つくば駅」前のつくばセンターバスターミナルから、筑波山神社入口を経由してつつじが丘まで行く路線バスが運行しています。時刻表や運賃はバス会社の公式サイトで確認できます。
今回紹介する「おたつ石コース」は、つつじが丘から出発です。
筑波山の登山道とルート一覧|初心者にも人気のおたつ石コース
筑波山の登山道
筑波山には複数の登山道が整備されており、登山や観光のスタイルに合わせてルートを選ぶことができます。
中腹の筑波山神社からはケーブルカー、つつじが丘駐車場からはロープウェイが運行しており、観光名所としても人気です。
登山道は筑波山神社側とつつじが丘側の両方から山頂へ向かって伸びており、それぞれに特徴があります。
以下の地図では、筑波山全体の登山道を一覧できるので、ルート選びの参考にしてください。

おたつ石コースの概要
「おたつ石コース」は、筑波山の登山道の中でも比較的歩きやすく、初心者にも人気のルートです。
ただし、終盤にはゴツゴツとした大きな岩場があり、不揃いな足場を探しながら登る場面もあります。
健康な方であれば問題なく登れる難易度ですが、運動靴やトレッキングシューズなど滑りにくい靴を用意すると安心です。
私(40代男)と小学校高学年の息子の2人で、すこしゆっくり目に歩いて90分ほどの登り行程でした。
上の地図で、左下の「現在地」が つつじが丘です。
今回紹介する「おたつ石コース」は、つつじが丘を出発し、弁慶茶屋で「白雲橋コース」に合流し、女体山頂に向かう登山道です。
- つつじが丘~弁慶茶屋…上の地図中、左下から伸びる水色線の部分です。とてもよく整備されたハイキングコースで、とても歩きやすい。40分ほどの行程。
- 弁慶茶屋~女体山頂…地図中で水色の線の右端から、右に延びるオレンジ線です。巨石・奇岩が多く、とても楽しいハイキングコースです。ただし、大きな岩が多く、足場が悪い場所があるので、足元に気を付けて歩く必要があります。50分ほどの行程。
中継地点の弁慶茶屋は、昔はお茶屋さんがあったのかもしれません。現在は、休憩できる腰かけがいくつか置いてある半径20メートルくらいの空き地となっています。
「おたつ石コース」の様子
ここからは「おたつ石コース」を実際に歩いた様子を、写真とともに時系列で紹介します。
登山道の歩きやすさや道の雰囲気、途中に現れる見どころを順番に追っていくので、初めての方でもルート全体をイメージしやすいはずです。
写真を見ながら登山道の様子を確認し、コース選びや準備の参考にしてください。
つつじが丘から出発
おたつ石コースは、つつじが丘からスタートします。
ここには約400台を収容できる大駐車場があり、路線バスの終点にもなっているため、車でも公共交通機関でもアクセスしやすい登山口です。
駐車場の周囲には軽食や土産物を扱う店が並び、登山前後の立ち寄りにも便利です。
また、駐車場の片隅には高さ2メートルほどの仁王立ちしたガマの彫像があり、ちょっとしたランドマークになっています。

ガマ像の右隣の階段を上ると、登山道の入り口に続きます。
ちょっと変な感じだと思いましたが、この階段より20メートルほど左には普通の道もあり、そちらが本来の登山道の入り口のようです。

つつじが丘のガマ大明神
階段を登りきると、そこには高さ3〜4メートルほどの「ガマ大明神」が立っています。
鳥居の下には小さな社があり、参拝できるようになっていますが、気づかずに通り過ぎてしまう人もそうです。

筑波山は「ガマの油売り口上」でも知られ、かつては傷を癒す薬効があるとされるガマの油が名物でした。 このガマ大明神は、その伝承を象徴する存在として、登山者や観光客を出迎えています。
入山の鳥居
ガマ大明神を過ぎるとすぐに、登山道の入口を示す鳥居をくぐります。
筑波山は古くから山全体が霊域とされてきたため、この鳥居は「ここから先は神域である」という境界を示す象徴的な存在です。
登山の始まりに鳥居をくぐることで、信仰の山としての筑波山に足を踏み入れる実感が得られます。

つつじが丘~弁慶茶屋
おたつ石コースの前半は足場が安定しており、初心者でも安心して歩ける区間です。 鳥居をくぐった直後は舗装された階段が続き、整備された参道の雰囲気を感じながら進みます。

すこしすると、丸太で止めた階段になります。
この辺りは結構勾配が急ですが、これなら足元は安心です。

登り始めてすぐに振り返ると、標高600メートルほどのつつじが丘から、すでに関東平野を望む美しい景色が広がります。

その後は勾配が緩やかになったり急になったりを繰り返しながら、歩きやすいハイキングコースが続きます。



弁慶茶屋までの中間地点を過ぎる頃からは、道の両側に木々が迫り、森の中を抜ける雰囲気に変わっていきます。


さらに進むとゴツゴツとした大きな岩が目立ち始め、道の真ん中に高さ60〜70センチほどの石が転がっていたり、1〜2メートル級の巨石が現れることもあります。



弁慶茶屋の直前になると、勾配は大したことがないながら、大きな石を踏みながら歩く感じになっていきます。

弁慶茶屋の直前では勾配はそれほどきつくありませんが、大きな石を踏みながら進む場面が増え、森の空気を感じながら歩く区間となります。 コース序盤の開けた眺望とは対照的に、自然に包まれた静かなハイキングを楽しめるのが特徴です。

弁慶茶屋
弁慶茶屋は、かつて茶屋があった場所ですが、現在はベンチが数脚置かれた空き地になっています。
休憩ポイントとして利用できるものの、建物などは残っていません。
しばらく森の中のハイキングだったあとで、久しぶりにすこしだけ、木の枝の間から周りの山々が見えます。

数々の奇岩を楽しむ 弁慶茶屋~女体山頂
弁慶茶屋を過ぎると、女体山頂へ向かう道は一気に表情を変えます。
森の中に続くハイキングコースの先には、奇岩や巨石が次々と現れ、歩くたびに新しい発見がある区間です。

最初に登場するのは有名な「弁慶の七戻り」。その後もユニークな形をした岩が矢継ぎ早に現れ、自然がつくり出した造形美を楽しみながら進むことができます。
女体山頂に近づくにつれて景観も開け、筑波山らしいダイナミックな登山の魅力を味わえるでしょう。
弁慶七戻り
弁慶茶屋からわずか100メートルほど進むと、「弁慶七戻り」と呼ばれる奇岩に出会います。
巨石が頭上に覆いかぶさるように架かり、その下をくぐる部分は高さ2〜3メートルほどあり、大人でも余裕をもって通れる広さです。
今にも落ちてきそうな迫力から、豪胆な武蔵坊弁慶でさえ七度も立ち止まり、勇気を振り絞って通ったという伝承が名前の由来になっています。

実際に登る際は反対側からくぐるため、正面から見るほどの恐怖感はありません。
見る角度によって印象が大きく変わるのも、この岩の面白さのひとつです。

母の胎内くぐり
弁慶七戻りを過ぎ、大きな石を踏みながら少し登ると、次に現れるのが「母の胎内くぐり」と呼ばれる巨石です。

巨石が、下の岩に支えられて宙に浮いているように見え、その迫力に圧倒されます。
次の写真の中央右の暗がりの中に写る案内板の高さが約150cmほどなので、それと比べると巨石の大きさがよく分かるでしょう。
支えになっている岩の周囲をぐるりと回り込むようにしてくぐることができ、実際に通り抜けてみるとスリル満点です。
その名の通り「母の胎内をくぐる」ような体験ができる、不思議で印象的なスポットです。

陰陽石
高さおよそ5メートルもある巨石で、写真には収まりきらないほどの大きさです。
2つの巨石が背中合わせに寄り添うように並んでおり、その姿が陰と陽の調和を思わせることから「陰陽石」と呼ばれています。
自然がつくり出した造形ながら、どこか象徴的な意味を感じさせる不思議な存在感があります。

名前はついていないがユニークな奇岩
この一帯は巨石が多く、足元にも大きな石が点在しています。多少は踏み場を選びながら歩く必要がありますが、道は平坦で足場もそれほど悪くありません。

このあたりには、名前は付けられていないもののユニークな形をした巨石も点在しています。
写真の岩は高さ3メートルほどで、まるで帽子をかぶったような姿をしており、縦に走る割れ目が印象的です。
特別な名前は付けられていませんが、森の中に突如現れるその存在感は強く、思わず写真を撮りたくなるスポットです。

国割り石
道沿いに現れる大きな岩には、中央に大きな割れ目が入っています。
その姿が、まるで国を分ける境界線を引いているように見えたことから「国割り石」と呼ばれるようになりました。
自然の力でできた割れ目ですが、昔の人々には象徴的な意味を持つ光景として映ったのでしょう。
筑波山の奇岩の中でも、歴史や想像力をかき立てる存在です。

出船入船
弁慶七戻りや母の胎内くぐりと比べると規模は小さいものの、穴の空いた巨石はやはり目を引きます。
この岩は「出船入船」と呼ばれ、まるで出ていく船と入ってくる船がすれ違う姿を思わせることから名付けられました。
小ぶりながらもユニークな造形で、奇岩めぐりの途中にちょっとしたアクセントを与えてくれる存在です。

しばらくハイキングコースが続く
「出船入船」を過ぎると、「北斗岩」までは比較的落ち着いたハイキングコースが続きます。
ところどころ小さなアップダウンや岩場もあり、変化があるものの平坦な部分が多い歩きやすい区間です。
途中には高さ30cmほどの小さな祠が道端に佇み、信仰の山らしい雰囲気を感じさせます。
また、木々の間からは関東平野を望む景色が時折開け、紅葉の季節には色づいた枝越しに美しい眺望を楽しむことができます。
奇岩の迫力とは対照的に、自然の静けさを味わえる穏やかなハイキング区間です。






北斗岩
高さ4〜5メートルほどもある直立した巨岩で、その堂々とした姿から「北斗岩」と呼ばれています。 まっすぐに立ち上がるような形は非常に美しく、筑波山の奇岩の中でもひときわ存在感があります。

今回訪れたのは11月初旬の晴れの日で、ちょうど紅葉が見頃を迎えていました。
特に北斗岩の周囲では、色づいた木々の枝が巨岩を彩り、自然の造形と季節の美しさが調和した印象的な景観を楽しむことができました。


紅葉の中、山頂が見えて来る
北斗岩を過ぎても、道は比較的歩きやすく整備されており、快適なハイキングが続きます。
特に紅葉のシーズンは、色づいた木々に囲まれながら歩く時間そのものがご褒美のようで、秋ならではの筑波山の魅力を存分に味わえます。


やがて木々の間から視界が開け、いよいよ女体山頂が間近に見えてきます。
ゴールが近づく高揚感と、紅葉に彩られた山道の美しさが重なり、登山のクライマックスにふさわしい区間です。

大仏岩
女体山頂へ向かう登山道が急峻になる直前、左上にそびえるのが「大仏岩」です。
高さはおよそ15メートルもあり、自然の造形でありながら、まるで立派な大仏像のように見える不思議な巨岩です。
森の中に突如現れるその姿は圧倒的な存在感を放ち、山頂へ向かう最後の区間にふさわしいランドマークとなっています。

登山道の最後の部分は、急峻で足場にも注意!
女体山頂直前の登山道は、それまでの歩きやすいハイキングコースとは一変し、ゴツゴツとした大きな岩を踏みながら進む急な斜面になります。
岩の配置が不規則なため、足場をしっかり確認しながら登る必要があります。
私たちが登った日は、ちょうど中学生の遠足とすれ違いました。
ほとんどの生徒は元気に下っていきましたが、2〜3名は斜面の険しさに怖がってしまい、先生がマンツーマンで降り方を指導していました。
それほどに迫力のある区間ですが、健康な方であれば休み休み登れば問題なくクリアできます。
女体山頂に至る最後の試練ともいえる区間で、登頂の達成感をより大きくしてくれる場面です。

女体山頂からの絶景
おたつ石コースのゴールは標高877メートルの女体山頂です。
周囲に他の高い山がないため、山頂からは関東平野を一望でき、天気の良い日には遠く富士山や東京スカイツリーまで見渡せます。
奇岩を巡りながら歩いてきた後に広がる大パノラマは、まさに筑波山登山のハイライト。
四季折々に表情を変える絶景を楽しめる、登頂のご褒美です。




帰りはロープウェイで下山も可
つつつじが丘と女体山頂の間にはロープウェイが運行しており、登山後の下山に利用することもできます。
女体山頂からの絶景を楽しんだあと、整備された階段を200メートルほど下るとロープウェイの山頂駅に到着します。

この日の私たちはロープウェイを利用して駐車場まで下山しました。
片道運賃は大人630円、子供340円(当時)で、歩きの下山に不安がある方や時間を節約したい方には便利な選択肢です。


実際のロープウェイ下山の様子はショート動画にまとめました。映像でも筑波山の雰囲気を感じていただければと思います。
もちろん、健脚の方は他の登山道を使って下山するのもおすすめです。
また、女体山頂からケーブルカー駅まで歩き、ケーブルカーで筑波山神社側へ下りるルートも選べます。
ロープウェイでつつじが丘へ戻るか、ケーブルカーで筑波山神社へ下るか、あるいは登山道を歩いて戻るか──体力や時間に合わせて下山ルートを選べるのも筑波山登山の魅力です。
筑波山おたつ石コース総まとめ:奇岩・女体山頂の絶景・下山ルート
日本百名山のひとつ、筑波山。
今回紹介した「おたつ石コース」は、初心者から楽しめる登山道でありながら、奇岩めぐりもできる魅力的なルートです。
ポイントを整理すると──
- アクセスが便利(バス・自家用車どちらも可)
- 山頂直前を除けば歩きやすく、健康な方なら安心
- 弁慶七戻り・母の胎内くぐり・北斗岩・大仏岩など奇岩が豊富
- 女体山頂からは関東平野を一望する絶景
- 下山はロープウェイやケーブルカーも利用可能
奇岩と絶景を同時に楽しめる筑波山登山、ぜひ体験してみてください。
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